奥深すぎるランニングシューズ沼
1歩目で膝痛に見舞われた原因の一つとして靴を挙げた。軽く調べてみたところ、どうやら最近のランニング界隈では厚底シューズを履くのが常識だそう。厚底にすることによってクッション性や反発力が高まり、負担軽減やスピードアップにつながるということらしい。何なら、カーボンプレートを入れて反発力をさらに高めるというチート的なシューズもあるのだとか。
ナイキやアディダスはもちろん、日本ブランドのアシックス、さらにはHOKAやOnといった、正直聞いたこともないブランドまで厚底シューズを取り扱っている。そして驚いたのが、各ブランドから何種類もの厚底シューズが発売されていることだ。コンサバに見積もって「5ブランド × 5種類」と前提を置いても、なんと25種類!その中から自分にベストな厚底を見つけられるワケがない。試着するだけで疲れてしまう。でも、自分の悩み(=膝痛)に合ったものを履きたい。
※余談ですが、「厚底」という言葉を使うのに若干の抵抗感やこっぱずかしさを感じるのは私だけでしょうか。ドンピシャ世代ではないものの、昔大流行した渋谷のコギャル×厚底ブーツを想起してしまうのが原因だと思うのですが。
すべて試着はできないので、まずは情報を仕入れようとYouTubeを漁った。中でも「Step」というシューズ専門店のスタッフさんがおすすめを紹介している動画が非常に参考になった。 学んだのは、どうやらシューズごとに狙っているターゲットが異なっているということ。使用者の目的が明確で、かつブランドの好みや足形に合うかという点踏まえて、自ずと買うべきシューズが決まってくるらしい。私の場合は、「日本人の足には日本ブランドがよく馴染む」との評判からブランドはアシックスを、そしてシューズはアシックスの中でも安定性重視と呼び声高い「ゲルカヤノ」を選択することにした。明日の会社帰りに、スポーツショップで買ってみよう。
餅は餅屋
翌日、膝の痛みは引いてきたが、まだ若干の違和感が残っている。自分の靴のチョイスが合っているのか不安で、昼休み中もAIを質問責めにしていた。今思えば、あれは背中を押してもらうための誘導尋問だったと思う。
それでも不安が解消されず、ふと会社の先輩女性ランナーのことを思い出した。彼女に聞いてみよう。「餅は餅屋」である。 さっそく1フロア上の先輩のオフィスにお邪魔する。
先輩「急にどうしたんですか?」
俺 「実は相談が……」
先輩「何の件でしょう?」
俺 「いや、実は、靴の件……」
先輩「ふぇ!? くつ??シューズですか???」
俺 「そう、ランニングの。おしえてください」
そりゃびっくりするわ。職場で面持ちからいきなり靴の相談を切り出しているんだから。しかも先方はランニングの先輩であって、社内の年次的には後輩。仮に年下であろうとその道のエキスパートには敬意を払ってアドバイスを請う。まさに「学に長幼なし」である。
先方はびっくりしつつも、ソッコーで「一般的には日本人の足にはアシックスが合うと言われてるんですよねー」と即レスしてきた。どうやらランナー界隈では常識のようだ。餅屋先輩(後輩)がアシックスのサイトを開いている隙に、先制攻撃で「ゲルカヤノって靴が気になってるんだよねー」と伝えると、「うぅーん、ゲルカヤノよりもっといいシューズありますよ」とこれまた即否定。やはり餅屋は餅のことに詳しい。
自分のチョイスが正解しているんじゃないかという淡い期待を否定され、また、自分が到底及ばない知識量を相手が持っていることを悟った俺は、完全に上下関係を理解し、もう何も言えなくなってしまった。そして俺は、餅屋の勧めるがままに行動することをひっそりと決意した。
すると餅屋は「これなんかいいんですよね、NOVABLAST。軽くてポンポン進む感じで、走るのが楽しくなると思います」と。
デザインがちょっと地味だったので、ランニングの時くらい普段履かない派手な靴を履きたいと伝えると、手際よくアディダスのページを開いてくれた。「Adizero Evo SL」もいいらしい。しかもカラーバリエーションが多く、黄色のモデルなんかはめっちゃテンション上がりそうだ。
これだけたくさんの種類がある中で、玄人ランナーはどう靴を選んでいるのか聞いてみると、「日によって履き替えたりしてますよ」との回答。
ん? ランニングシューズって1足だけ持つもんじゃないの?
どうやらこの餅屋の場合、5〜6足のシューズが常時車に入っていて、その日の気分や練習内容によってシューズを選ぶらしい。理解の範疇を超えすぎて、「ふーん、俺がゴルフセットを4セット持ってるようなもんか」と謎の負け惜しみコメントを残すことしかできなかった。
あと興味深かったのは、シューズ業界にもルールがあるらしいこと。詳しくはわからないが、厚底部分の高さや、反発力の規制みたいなものがあるらしい。たしかにゴルフクラブでも、反発係数のルールを無視した「ルール不適合の高反発チートクラブ」というのが存在する。それと同じようなものかと妙に納得した。
話をシューズ選びに戻そう。アディダスはカラバリの多さに惹かれたが、「日本人の足にはアシックスが合う」とYouTube&餅屋からも聞いた俺は、アシックスを選ぶと心に決めていた。サイトで見たアシックスは落ち着いた色味だったが、実物を見たら気が変わるかもしれない。そう思い「NOVABLAST」を第一候補としてシューズ屋を物色することにした。
俺 「相談乗ってくれてありがとう、帰りにACADEMY(スポーツショップ)寄って帰るわ!」
餅屋「ダメです。ACADEMYには行かないでください」
俺 「ふえっ???」
餅屋「シューズはここで買ってください、『Fleet Feet』」
俺 「この店なに? 聞いたことないけど」
餅屋「ここは履いた後も返品できます」
俺 「それ普通でしょ、未使用ならレシートあればどこだって返品できるでしょーに」
餅屋「外で実際に何回か走った後も返品できます。ランニングシューズは『走ってみないとわからない』があるので、これ大事です」
俺 「まじかよ! しかも俺の家の近くにあるわ! さっそく今日行くわ、サンキュー!」
かくして、買うべきシューズと、買うべきショップが決まった。
噂のランニング専門店「Fleet Feet」へ
会社帰りに、家の近くの「Fleet Feet」に来てみた。Victoria的な総合スポーツ店をイメージしていたが、まったく違った。ここはランナーのためだけの店だ。店内にあるのはランニングシューズ、ランニングウェア、ランニングウォッチなど、ラン用品のみ。
しかも驚くべきことに、店内にトレッドミル(ランニングマシン)が置いてあった。さすがに使うのは恥ずかしいが、ランニングシューズを試着してそのまま店内で走れるということらしい。お客さんもたくさんいて、家族へのプレゼント用にシューズを探している人もいた。
さっそく外国人の店員さんにアシックスの「NOVABLAST」が欲しい旨を伝えると、「アシックスのNOVABLASTは、昨日ちょうど入ってきたところよ」とのこと。どうやら新製品らしい。カラーはくすんだピンクで桜っぽい雰囲気。地味というよりは、落ち着いた良い色だと感じた。
革靴のサイズを参考に、さっそくUSサイズ9を出してくれたが、ちょっとつま先の余裕が少ない感じがする。事前調査によれば、つま先とシューズ内側先端の間に0.5〜1cm程度の遊びがあるくらいが、ランニングシューズのサイズ感として適切らしい。なお、夕方の足がむくんでいる時間帯に試着した方がよい、という豆知識もある。
USサイズ10にしてみたらサイズ感はぴったり。一応両足履いて、店内をジョギングしながら履き心地を確かめるフリだけして「これください」と言った。トレッドミルを使う勇気はない。誰も使っていなかったし、きっと置いてあるだけなんだろうと自分を納得させ、店を後にした。
家に帰って、室内でまた履いてみた。初の厚底。足踏みするだけでもクッションと反発を感じる。明朝のランが楽しみすぎる。シューズを脱ぐのが惜しまれたが、さすがに脱いで寝床についた。
次回、初厚底シューズの使用感をお伝えする。



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