ハンソンズは無理!初心者がヒザブラストを防ぐサブ4.5練習プラン【8歩目】

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ゲルカヤノを手に入れてからのランニングは、まさに別世界だった。ラン直後の膝に若干の違和感は感じる時はあるが、それは痛みとは程遠い。 あんなに私を苦しめていた膝痛は影を潜め、トボトボ歩く修行ではなく、「心拍ゾーン2付近を維持したまま、笑顔で走り続けるジョグ」が日常になりつつある。

しかし、快適なランニングライフを送る一方で、私の心には一つだけ小さな「トゲ」が刺さっていた。

会社の同僚、「餅屋」の存在だ。 ランニングの師とも言える彼女がノータイムでノバブラストを推してくれたからこそ、私はランニングシューズの世界に足を踏み入れた。それなのに……。

餅屋への気まずい告白と「頭でっかち」な私

「ノバブラスト最高!」と笑顔で報告するはずだったのに、結果的に私はノバブラストを返品し、ゲルカヤノに乗り換えてしまったのだ。

オフィスで餅屋と顔を合わせた際、若干の気まずさを感じつつも、嘘をつくのは嫌だったので正直に白状した。

「実は……ノバブラストだと膝が悲鳴をあげちゃって、ゲルカヤノに交換しちゃった。そうしたら膝痛が嘘みたいに消えていい感じに走れるようになったよ。」

申し訳なさそうに伝える私に対し、餅屋は嫌な顔ひとつせず「やっぱりシューズには合う・合わないがありますし、いろんなシューズを試すのがいいですよね。いくつか持っててもいいですしね。」と爽やかに笑ってくれた。さすが餅屋、懐が深いうえに、シューズを複数所有することへの抵抗が一切ない。

安堵した私は調子に乗って、最近YouTubeやネットでランニング理論を調べまくっていて、すっかり頭でっかちになっていることを打ち明けた。

すると彼女は「私もマラソンの本持ってるので貸しますよ」となんともありがたいオファーをしてくれ、数日後オフィスに1冊の本を持ってきてくれた。

渡された本の表紙を見ると……英語の本かーい!

一瞬フリーズしそうになったが、ここで動揺を見せるのは頭でっかちランナーとしてのプライドが許さない。私は平静を装い、ポーカーフェイスでこう答えた。

「お、おう。サンクス、読んでみるわ。」

衝撃の出会い:『Hansons Marathon Method』との遭遇

格好をつけて受け取ったものの、日頃あまり本を読まない私に、よりによって英語の本とは。完読のハードルは極めて高いと言わざるを得ない。

餅屋は年次的には後輩だ。英語だからと言って読まずに返却するのはプライドが許さない。引くに引けなくなった私は、この「秘伝の書」を読み進めることとした。

渡されたのは、アメリカのランナーの間で伝説的なバイブルとされている『Hansons Marathon Method(ハンソンズ・マラソン・メソッド)』。トレーニングメニューの紹介や、トレーニングが与える体への影響、またビギナー・上級者・アスリートの各レベルに向けた週ごとの練習プランの提案など、体系的に整理されている。

実際にページをめくると、Aerobic(有酸素)や Anaerobic(無酸素)、Capillaries(毛細血管)といった馴染みのない英単語が次々と飛び出してくる。

しかし、ネットやYouTubeで頭でっかちに調べまくっていた知識が若干入っていたおかげで、「あ、毛細血管にょきにょきのことね」とか「ミトコンドリア増殖のことか」と自分が既に調べていた知識と答え合わせをするような感触があり、ニヤニヤしながらすんなり読み進めることができた。

なお、読み始める前のハードルの高さからは想像もできなかったが、このハンソンズマラソンメソッドは、私の人生の中で最も真面目に読んだ洋書であり、最も面白い洋書の一つとなった。

翻訳アプリを片手に解読を進める中で、私はランニング界隈の超重要指標である『VO2Max(最大酸素摂取量)』という概念に初めて出会った。

このハンソンズメソッドではVO2Maxに焦点を当て、体内に取り込める酸素の限界量をいかに高め、どう走りに還元するかを意識して練習メニューを組んでいるようだ。私の「頭でっかち度」は更に加速していった。

ちなみに私のゴルフ特化型ガーミン(Approach S62)ではVO2Maxを計測してくれない。頭でっかち初心者ランナーとしては自分のVO2Maxを知っておく必要があるだろう。ガーミンのグレードアップもおいおい考えてゆかねばなるまい。

そして何より膝を打ったのが(←もう痛くないからね)、ハンソンズメソッド最大の核心である『Cumulative Fatigue(蓄積疲労)』の理論だった。

一般的には「フルマラソン本番までに一回は30km走を経験すべし、そこから先はアドレナリンがどうにかしてくれるから大丈夫」がセオリーだが、この本の特徴は「最長でも25kmちょっと(16マイル)までしか走らない」こと。 1週間かけて脚にじわじわと疲労を溜め込んだ状態で25kmを走り、「フルマラソンのラスト10km(一番キツい場面)を疑似体験させる」という考え方だ。

……うん、理論はすごく納得できる。

納得はできるんだけど「ビギナー向けプラン」のページを開いて、私は絶句した。

「……え、初心者が週5〜6回走るの!?」

いくら最長20kmとはいえ、一週間の走行距離が長すぎる。 専門用語に感心している場合ではない。いくら過保護なゲルカヤノを履いているとはいえ、この過酷なメニューに真面目に取り組んだら、私の膝は爆発、いや「ヒザブラスト」を起こして始まったばかりのランニング人生が終了する。

ハンソンズメソッドを読んでランニングの基本的な理論は理解できた。が、この本が提唱する練習メニューは、万人に合うことはないだろう。さてどうするか。。。

初心者が膝を壊さない「週3回・過保護なマラソン練習計画」の作り方

「今の自分がどれだけ走れるようになるか」なんて、やってみないと分からない。 ならば、ハンソンズの思想やネットの知識を良いとこ取りしつつ、「絶対に膝を壊さない、仕事と両立できる自分専用の計画」を作るしかない。

頭でっかちのプライドをかけ、以下の条件を考慮して計画を練り上げた。

  1. 目標はフルマラソン4.5時間切り 俗にいう「サブ4.5」を目標とする。
  2. 週3回の練習(仕事への影響を考慮) 仕事に支障を出さないため、基本は週3回。無理のないペースを厳守する。継続は力なり。
  3. 「10%ルール」を徹底した、なだらかな走行距離アップ 1週間の総走行距離を徐々に増加させてゆく。ただし急激な走行距離の増加はケガの元。1週間の総走行距離の伸びは前週比で+10%以内に抑える。
  4. 平日2回の「イージーラン」+週末の「ロングラン」 平日は距離短めでサクッと走り、週末(できれば土曜日)に少し長めの距離を走る。
  5. 「ロングラン」は一週おき ロングランの疲労は1週間では抜けない。2週間に1回を基本とする。
  6. 長距離の後は「2日間の完全休息」 週末に長めの距離を走ったら、疲労抜きのために2日間しっかり休む。極力、火・木・土を練習日とするよう努力する。
  7. 最初の2ヶ月は「脚づくり(キロ9分〜10分)」 距離に関わらず、とにかく超ゆっくりのジョグペース(キロ9分〜10分)で心拍ゾーン2(145未満)をターゲットとする。
  8. 目標タイム「サブ4.5(4時間半)」を見据えたペースアップ 目標である4.5時間切り(レースペース:キロ6分23秒前後)を達成するため、前半の「脚づくり期間」が終わってからは、平日のうち1回はペースを上げたランに切り替え、ロングも様子を見ながら段階的にペースを引き上げていく。

計画はあくまで計画である。様子を見ながら修正(アジャスト)していく前提の、いわば「可変型・過保護プラン」だ。

こうして出来上がった、私のマラソン練習計画表がこちらである。いろいろツッコミどころはあると思うので、優しい目で見てほしい。

自分で言うのもなんだが、頭でっかち、かつ細かい性格が如実に表れていると思う。計画を立てる時間は、あーだこーだ考えながらの細かな調整作業が殆どではあったものの、自分が将来疾走している姿を想像したり、ノバブラストを履きこなしている情景を夢想する時間は、控えめに言っても、走るのと同等かそれ以上の満足感を与えてくれた。

果たしてこの練習計画が実を結ぶのか、それとも絵にかいた餅となるか。半年後のお楽しみである。

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