「初心者はとにかくジョグで足を作れ」
その教えに従い、毛細血管とミトコンドリアを育てるべく「心拍ゾーン2」を守る過保護なランニングへ繰り出した私。
だが、待っていたのは「ちょっと走ってはアラートが鳴り、歩かされる」という無限の徒歩ループだった……。
走りたい気持ちと心拍数の板挟みになり、足元の相棒(ノバブラスト)に小さな疑念を抱くまでの葛藤を描く。
練習メニュー:溢れる専門用語と「初心者はジョグだけ」の教え
4歩目でフォームの話をした。「どう走るか」はなんとなくわかった気がする。5W1Hの「How」にあたる部分だ。次は「What」、即ち「何をするか」を調べてみた。ネットで「フルマラソン 練習メニュー」と調べると、強そうなカタカナ用語がこれでもかと出てくる。ランニング界隈はとにかく横文字が多い。
- ジョグ(Jogging): 体力づくりや疲労回復のための基本のゆっくり走り。
- ペース走: 一定の決まったペースを維持して長い距離を走る練習。
- テンポ走: ジョグより少し速く、心地よいキツさを維持する練習。
- 閾値(いきち)走: 「かなりキツいけど20〜30分維持できる」限界のペースで走り、乳酸が溜まりにくい体を作る練習。
- インターバル走: 全力に近い疾走と不完全回復(ジョグや歩き)を繰り返す、心肺を強烈に追い込む練習。
- ロング走 / LSD(Long Slow Distance): 長い距離、または極めてゆっくりとしたペースで長い時間走り、持久力を養う練習。
「よし、俺もインターバルとかやって限界突破するぞ!」と意気込んだものの、今の私の筋力や腱はまだランニング仕様になっていない。ここで無理をすれば故障して数週間を棒に振るだけ。 専門書にも「プロでも練習の8割はジョグ。初心者はとにかく2〜3ヶ月ひたすらジョグで足を育てるべし」とある。膝のこともあるので、しばらくは大人しくジョグをして「足を作る」ことにした。
ジョグの定義とその効果
じゃあ、その「ジョグ」って具体的にどれくらいのペースなのか? 調べてみると「笑顔でおしゃべりしながら走れるペース」とか「マラソンペース+キロ◯分」とか諸説ある。でも人と走ったら遅すぎて迷惑をかけるレベルだし、手元のノバブラストは跳ねすぎて勝手にペースが上がってしまい管理が難しい。
そこで行き着いたのが「心拍数を基準にする」という超医学的なアプローチだ。 ランニングには「心拍ゾーン」というものが1-5までの5段階あり、中でも「ゾーン2(軽度な有酸素運動)」をキープして走ると、毛細血管が拡張し、細胞内のミトコンドリアが増えて持久力が爆上がりするらしい。ランニングって科学だ。超医学的で面白い!
Geminiとの会話では、膝への負担を最小化しつつ、毛細血管ニョキニョキ・ミトコンドリア増殖を最大化するために、ゾーン2を超えそうになったら歩けときつく指導された。そんなに甘やかしてくれるの、ありがとうと思っていたが、その指示のおかげで私の心拍ゾーンキープランは甘酸っぱい思い出に変わった。
「心拍ゾーン2」の壁と、ガーミンの賢い設定
しかし、いざ走ってみるとゾーン2なんて一瞬で超える。 ちょっと足を踏み出しただけでレッドゾーンだ。 調べてみると、心拍ゾーンの設定方法には以下の2つがあるらしい。
- 最大心拍数ベース(%MHR):
220 - 年齢で出した最大心拍数だけを基準に、単純に割合でゾーンを区切る方法。簡単だが、個人の体力を考慮しにくい。 - 心拍予備量ベース(%HRR): 最大心拍数から「安静時心拍数(完全にリラックスしている時の心拍)」を引いた残りの振り幅(予備量)を使って計算する方法。より個人の運動能力にフィットする。
幸い、寝るときもガーミンをつけていたおかげで、自分の安静時心拍数が「58」だと知っていた。さっそくHRR方式に設定を変更してみる。 すると、ゾーン2の上限が「128」から「144」に跳ね上がった!「よし、これなら結構走れるぞ!」とテンションが上がる。
これってランニング……?
……甘かった。 上限が144になろうが、走り出せばあっという間に144を突破する。手首のガーミンが「ブルブルッ!高すぎます!」とアラートで振動しまくっている。
最初のうちは少し歩けば下がったが、体温が上がって水分が抜けてくると、ペースを落としても心拍数が高止まりする「心拍ドリフト」現象が発生。 こうなるともう泥沼だ。
- ちょっと走る
- アラームが鳴る
- 歩く
- 心拍が下がったらまた走る
- すぐアラームが鳴る
- また歩く……
全然走れないやないか!!! こんなの俺の思ってた爽快なランニングじゃない。走りたい!しかし、今は膝と足を作るための我慢のとき。ミトコンドリアを育てるための修行なのだ……と言い聞かせてトボトボ歩く。
ガーミンはかく語りき
ラン後にガーミンのデータを見てみた。下のグラフがそれだ。灰色が心拍数(左軸)、青線(右軸)がペースを示している。

要は、この日起こったのはこういうことだ。
- 開始1:30で133bpmまで急上昇したのでペースを抑えた
- その後、いつの間にかペースが上がってしまい5:30で初めて心拍ゾーン3(145bpm)にヒット
- 11:00時点で150bpmをヒット、そこでウォーキングを挟む英断
※青線が谷になる=ペースが落ちている=歩いている - 後半にいくにつれ、英断の頻度が増加
- ストレス溜まりすぎて最後の5分は心拍ゾーン無視で走り抜きキチゲ解放
心拍管理の意識を強く持てたのは今回の収穫と言える。そしてこのデータは宝の山だ。次からはこのようなギザギザの形にならないよう、心拍もペースも一定をキープできるように走りたい。
疑い
……と、頭ではわかっている。
わかっているのだが、ここで「走るペース」と「心拍ゾーン」の強烈な板挟みが発生する。
心拍をゾーン2(144bpm以下)に抑えようとすると、もはや走るのを諦めて「ほぼ徒歩」のスピードまで落とすしかない。 しかし、少しでも「走っている実感」を得られるペースまで上げようとすれば、心拍は一瞬でレッドゾーンに突き抜ける。
走りたいのに、走れない。 歩きたいわけじゃないのに、歩かされる。
この不毛な「走・歩・走・歩」の無限ループの中、私の脳裏にひとつの「疑念」が浮かび上がった。
今日も、あのノバブラスト(NOVABLAST)の爆風のような反発力に背中(足裏)を押され、勝手にペースが上がってしまった。
軽くて、跳ねて、最高に気持ちいい。そう信じて買った、私の大切なファーストシューズ。 だが、この「歩くような超スロージョグ」をキープしなければならない修行において、この“じゃじゃ馬な推進力”は、どうなのか……?
もしかして、今の私の足に、このシューズは……。
次回、「別れ、そして気になるアイツとの対面」、乞うご期待!
あ、また膝痛い。


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